(感想)『羊と鋼の森』若き調律師の確かな成長に共感!多彩な表現で音楽を”読ませる”作品。

小説紹介
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2016年本屋大賞受賞作『羊と鋼の森』

  • わたしの趣味に合っているかな?
  • 興味があるけど買って後悔しないかな?
  • 読み始める前に少し詳細を知りたい!

そんな疑問に答えるため、サラリーマン読書家のとろすけが書評にまとめてみました。

とろすけ
とろすけ

ネタバレしない範囲で描いていくので安心してください。

この本を一言で表すと、
時間が無くても読みやすい長さで紡ぐ、
静かで美しい職人魂の成長物語

読んでみようかな…なんて悩んでいる人はぜひご参考に!

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要するにどんなお話?

2016年の本屋大賞受賞作。

一流調律師との運命的な出会いに導かれた青年が、悩み、迷いながらも真の職人へと歩み進める物語。

「清廉」とか「純粋」とか「凛」といった言葉がよく似合う落ち着いた小説です。

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あらすじ(ネタバレなし)

北海道の村で育った外村は、ある日学校のピアノを見に来た調律師の板取さんに出会い、彼の美しい調律に魅せられてしまう。

それまでぼんやりと考えていた将来を明確に意識するようになった外村は、専門学校を経て板取さんの勤める楽器店に調律師として就職するのであった。

そこで彼は個性豊かな先輩たちの教えを請いながら、自らがありたい職人の形を追い求めて葛藤する。

彼がピアノと結びつけたのは、故郷の深い森。

子供のころから慣れ親しんだ故郷の森に溶け込む感覚は、木から生まれたピアノと深く繋がっていた。

少しずつ技術を磨き始めた外村は、ついに「この人の演奏するピアノを調律したい」と思える人物に出会い…。

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厳選3ポイント!『羊と鋼の森』はここがいい!

ここからは、私が『羊と鋼の森』を読んで感じたこの本はここがいい!ポイントを「3選」紹介していきます!

①まるで詩のよう!音が伸び広がっていく描写が美しい!

音って新鮮さがマストですよね!
楽器から生まれたまさにその瞬間には消えてしまいますから。

そんな生まれた瞬間に消えていく音を捕まえて、新鮮なまま文章にするにはどうすれば良いか?

その難題に応えるため、宮下奈都さんは多彩な工夫を凝らしています。

そのひとつなのか、本作を読んでいて私が感じたのは、まるで「詩」のようだということ。

とろすけ
とろすけ

美しいリズムが伸び広がっていくような文章がこの小説の魅力です。

②ピアノを通じて現れる本当に良いものの魅力

小手先だけの技術では、人を感動させる音色は出せない。

本作はそんなメッセージを抱えた小説だと感じました。

ピアノもまた自然の木を伐りだして加工した楽器ですね。

  • 良い木材と腕のある職人が出会い
  • 奏でたい想いがある演奏者と調律師が出会って初めていい音が出せる。

自然界から人への一貫した繋がりがないと、一見どんな良品でも”うわべ”だけで終わってしまいます

自然の中で育った外村は、音楽の知識が無くてもピアノと森が密接につながっていることを分かっていたのかもしれません。

とろすけ
とろすけ

本当に良いモノとは何か、その答えを見つけられる小説です。

③静かな職人魂の葛藤と成長の日々に注目!

どんなに経験を積んでも満足することのない“職人魂”が際立っているのも本作のポイントです。

先輩調律師たちそれぞれが持つ流儀も様々で、それぞれの理想に向かって日々腕を磨き続けていますね。

まさしく職人の”葛藤”が見えるシーン。

外村の場合は、

  • 自分がパッとしないのは才能のせいなのか?
  • いつ板鳥さんみたいになれるのだろう?

こういった焦りにも似た気持ちが彼を掻き立てますね。

この外村にとって一種の”ブレイクスルー”になったのが和音との出会いではないかと思います。
和音と出会ってからクライマックスにかけて、外村が見せた技術的/精神的な成長にも注目!

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とろすけの好きなシーンはここ(ネタバレなし)

映画.com『羊と鋼の森』ウェブサイトより

板取さんの腕を改めて見せられて、コンサート調律師にはならない(というか自分にはなれない…)と思っていた外村が、改めてコンサート調律師を目指しはじめたきっかけになった出来事ですね。

  • 才能とは?
  • 最高の調律とは?

誰もが迷っているときに、いちばんの「答え」を持っていそうな板取さんがさらりと言ってのけたセリフが印象的でした。

何を言ってのけたかは、ぜひ読んでみてのお楽しみ!

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読後評:とろすけの感想

実は当初、『羊と鋼の森』にそこまで期待していませんでした。

この本を手に取った当時、私のNo.1小説は住野よる『君の膵臓をたべたい』でしたが、2016年の本屋大賞でその『きみすい』を2位に抑えて大賞に輝いた『羊と鋼の森』とはいかほどの作品か…?

「確かめてやろう!」
ぐらいの気持ちでこの本を手に取ったきっかけです。

『きみすい』とはジャンルの違う、文学的な美しさを秘めた作品。

耳で感じるはずの音楽を、文字でどう表現するか?
>宮下奈都さんの豊かな文体が、聞こえない文字に音楽性を与えます。

文字を聴くことができない。音楽をどうやって表現するか?という難しいテーマにチャレンジした作品だと思いました。

一流を追い求める職人の豊かな成長の物語。おすすめです!

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とろすけ

月に10冊以上の小説を読む読書家サラリーマン。

本業は製造業のITエンジニア。

好きな作家は辻村深月と恩田陸。

おすすめは
『かがみの孤城』
『琥珀の夏』
『蜜蜂と遠雷』
『君の膵臓をたべたい』など。

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