小川糸さんのデビュー作にして発行部数90万部を超えるヒット作『食堂かたつむり』
- わたしの趣味に合っているかな?
- 興味があるけど買って後悔しないかな?
- 読み始める前に少し詳細を知りたい!
そんな疑問に答えるため、サラリーマン読書家のとろすけが書評にまとめてみました。

ネタバレしない範囲で描いていくので安心してください。
この本をひとことで表すと…
・酸いも甘いも抱えて生きる大人に響く…
・命をいただく尊さに感謝があふれ出す物語。
読んでみようかな…なんて悩んでいる人はぜひご参考に!
要するにどんなお話?

豊かな食材と素朴な料理人が織りなすあなただけのフルコースに注目!

嫌なことがあっても前を向いて生きていく決意を静かに教えてくれる一冊です!
あらすじ(ネタバレなし)

同棲していた恋人にすべての荷物を持ち逃げされて、ショックのあまり言葉まで失ってしまった25歳の倫子。
彼女は手元に唯一に残った”ぬか床”を抱え、行くあてもなく10年ぶりに故郷の村に戻った。
倫子は母親のへそくりを持ち出そうとするがあえなく失敗し、母に見つかってしまった挙句、実家に住まわせてもらう代わりに飼っていた豚の世話係を任せられる。
そんな踏んだり蹴ったりの彼女に唯一残ったものが料理の腕…。
ふと降りてきた料理の神様に導かれるように、倫子は1日1組限定でメニューのない食堂を開く。
やがて倫子の料理を食べると幸運が訪れるといううわさが広まっていき…。
小さな村の豊かな食材と、暖かな人々にささえられ、少しずづ前を向いて生きていこうとする倫子の成長の物語。
厳選3ポイント!『食堂かたつむり』はここがいい!

ここからは、私が『食堂かたつむり』を読んで感じたこの本はここがいい!ポイントを「3選」紹介していきます!
料理をとおして伝わる優しいストーリー展開がGOOD
ものがたりの随所にちりばめられた、倫子の料理に対するこだわりが読者の目を惹きます。
それは食材選びだけでなく『食堂かたつむり』のコンセプトやお客様に出すメニューの構成まで詳細に至ります。

食べる人のために考え抜かれた優しい料理の数々に、私たちの心も暖かかくなること間違いなしです!
恋人も貯金も失った絶望的な状況から、熱意と自信をもって新たな生活を拓いていく…。
倫子が自分の料理に感謝する人々に支えられて成長していくストーリーはあなたの背中もそっと押してくれること間違いなしですよ。
”生きる”に訴える具体的なエピソード
- 外国人の奥さんに逃げられた熊さんに、
- 愛する人が夢に出てくるのを待ち続ける未亡人など…
お客様それぞれが抱える背景を具体的に描くことで、料理をとおして彼らの意識が変わる瞬間もリアルに伝わってきます。
思い出の料理はそれにまつわるエピソードにも人それぞれの物語がありますよね?
食堂かたつむりで料理を食べた人に起こるささやかな奇跡を「ただの偶然では?」と片づけてしまうのは簡単ですが、倫子の作る料理には食べた人の”生命”を揺さぶる衝動を起こすこ力があるのかな?とさえ感じます。
前半と後半の転調に感謝の気持ちが沸く!
倫子が「食堂かたつむり」の立ち上げに奔走する前半と、母親の思いもよらぬ告白から怒涛のように展開する後半でガラッと印象が変わります。
前半のテーマは「食べることは生きること」
一方で後半のテーマは少し変わって「食べることは、誰かの命をいただいて生きること」
私たちに命を差し出してくれる生き物のため、それをありがたくいただいて生きていかねばならない義務感を感じる展開です。

きっと、感謝の気持ちが芽生えるはず!
とろすけの好きなシーンはここ(少しだけネタバレを含みます)

食堂かたつむりの3人目のお客様。
桃ちゃんにだすメニューを考えて、実際に振る舞うまでのシーンが私は好きです。

桃ちゃんたちに出すメニューを”ジュテームスープ”に決めるまでの倫子の優しい心遣いが素敵ですよ。
倫子の料理に対する思いやりの深さが感じられ、私もこんな気遣いができる人になればいいなと思う場面でした。
それにしても女子高生の恋の様子を読んでキュンキュンしてしまうなんて、自分も年を取ったなと思う次第です(笑)
読後評:とろすけの感想

先週ご紹介した『ライオンのおやつ』と同様、「食べる」と「生きる」2つの動詞を小川糸さんの優しい文体でつなぎ合わせた名作です。
つい、自分が食堂かたつむりのお客だったら、倫子にどんな料理を作ってほしいかを考えてしまいますね。
それを考えているうち、自分にとって「心に残った食事」を思い出して、それを食べたときの満ち足りた気持ちを思い返すことができました。
読後の感想が「スカッとする」でも「涙があふれ出す」でもなく、ただただ穏やかで温かい気持ちになりたい…
そんな読者さんにぜひ勧めたい1冊です!
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