2014年の本屋大賞受賞作『村上海賊の娘』
- わたしの趣味に合っているかな?
- 興味があるけど買って後悔しないかな?
- 読み始める前に少し詳細を知りたい!
あなたのそんな疑問に応えるため、サラリーマン読書家のわたしが書評にまとめてみました。

ネタバレしない範囲でまとめているので安心してください。
この本をひとことで表すと…
・歴史小説好きなら必読!
・教科書に載らない”戦国のリアル”を描ききった名作!
読んでみようかな…なんて悩んでいる人はぜひご参考に!
要するにどんなお話?

2014年の本屋大賞受賞作。
乱世にあって”生きる意味”を問う本格歴史小説です。

手に汗握るアツい海賊の生きざま感じたい人はぜひ!
あらすじ(ネタバレなし)

戦国時代、瀬戸内海に君臨した伝説の海賊・村上家。どの大名家にも服属せず独立を貫く海賊王・村上武吉には1人の娘がいた。
彼女の名前は景(きょう)。
日課は海賊遊びで、男勝りな性格が災いしてか成人しても嫁ぎ先がなく周囲を悩ませていた。
そんな瀬戸内を尻目に、畿内では織田信長が着実に勢力を伸ばし始める。
大阪本願寺から支援要請を受けた西国の大名・毛利家は村上家に兵糧の搬送を依頼するが、武吉の判断も待たずに景は大阪に向かってしまう。
景が大阪で見たのは、従来の”海賊遊び”とは次元の違う本物の戦。
信心のままに命を捨てる門徒と、仏法を意のままに曲解する本願寺の「闇」の部分。
さらに大阪湾では織田水軍と村上水軍が激突するに至り…。
義理とは?信条とは?
乱世にあって”生きることの意味”を真剣に投げかけた超大作です!
厳選3ポイント!『村上海賊の娘』はここがいい!

ここからは、私(とろすけ)が『村上海賊の娘』を読んで感じたこの本はここがいい!ポイント「3選」を紹介していきます!
①史実に基づいたダイナミックな合戦シーンがリアル!
1576年に実際に発生した「天王寺の戦い」と「第一次木津川口の戦い」を忠実に描写しつつ、その裏で展開されていただろう各猛者たちの駆け引きをリアルに描きます。
文字どおり、生きるか死ぬかのぶつかり合いが緊張感をもって示された作品です。
冗長で退屈な心情描写なんてありません。
よく分からないモヤモヤ感なし!

鬼気迫る文章を感じてください。
②”迷い”を捨てた人の美しさに驚嘆
特に下巻では、景をはじめ登場人物たちが一切の”迷い”を捨てる瞬間が多く見られます。
自分を縛っていた恐怖心や、半端な出世欲を断ち切って本能のままに突き進む瞬間が至る所に見られるワケです。
短い人生だからこそ、周りの目なんて気にせずに本能のまま生きる…
そこに本物の美しさあり!です。
まるで「自分を持つこと」を勝手に遠慮している現代人にむけた作者のメッセージのようですね。
③小が大に立ち向かうような法官びいきを感じさせる展開
村上海賊が君臨した伊予国は現代の愛媛県。
巨大勢力・織田家との決戦は、小が大に一矢報いたみたいな爽快感を感じさせます。
私たちは織田信長 vs 本願寺の戦いの結末を知っているわけですが(歴史の教科書に載っているので)少なくとも1576年当時は互角の勝負。
まるで夏の甲子園の決勝戦で地元のチームが都会の強豪校と互角に戦ってるみたいな”判官びいき”の気持ちになりますよ(ちょっとマイナーかな…)
とろすけの好きなシーンはここ(ネタバレなし)

真鍋七五三兵衛(織田水軍)と村上元吉(村上水軍)の開戦でしょう。
決して殺し合いが好きなわけでもないのに、信念のためにぶつからざるを得なかった2人の男たち。
言葉数は少なく冷静にも見える2人ですが、頭のなかでは強烈な覚悟を決めていたのでしょう。
それはまさしく目の前の相手を殺す覚悟…
”ぶち抜いちゃれ!”
”踏みこたえよ!”
真鍋水軍の安宅と村上水軍の関船がぶつかる場面は、全身が熱くなりました。
この後の逆転に次ぐ逆転劇の序章にふさわしい、熱い幕開けだったと思います。
読後評:とろすけの感想
2014年本屋大賞受賞作。
学校の歴史の授業のなかであっさりと片づけられていた「石山合戦」が、中身の伴ったリアルなストーリーになって読者に迫ってきます。
作中で簡単に人が死んでしまうことに対する抵抗感はありますが、それも含めて戦国の殺伐とした世界に読者を引きずりこみます。
この世の栄華か、来世の幸福か?
2項対立のなかであがく人々が多く書かれていますが、結局どちらをとっても人間って儚いものですね…。

まさに”戦国のリアリティーショー”を体感してください。